その4 W650

カワサキのスーパーフラットなネオレトロ



W650



無縁レベル:1




友人になにか扱き下ろして文章化して欲しいバイクがあるか尋ねたところ

「W650書けよ、俺のバイク。」

と言われたのでご紹介。






110505-2.jpg
W650('99)


スポークホイールに前後のメッキフェンダー。
「バーチカルツイン」と呼ばれる直立した空冷2気筒エンジン。
時代を感じさせるタックロールシートにキャブトンマフラー。


現代の技術を持って作り直された 「ネオ」レトロバイク、W650。
そのスタイルは登場当時驚異的な性能を誇った往年の名車W1を彷彿とさせます。

675ccのエンジンは50馬力(後年は48馬力)を発生。
性能曲線を見てみると回転数の上昇に従って比例するように馬力も上昇する、
とても乗りやすいフラットなエンジンだと言えます。
スロットルを開ければドンと加速するのではなく穏やかにスピードが乗る、そんな特性でしょう。

SOHCのカムシャフトはチェーン駆動ではなくシャフト+ベベルギア(傘歯車)、
シリンダー右側に屹立するシャフトと円盤状のケースはこの駆動方式に由来するもので
OHVエンジンライクな、いかにも旧車的雰囲気を出すのに一役買い
ネオレトロにありがちな「普通」のスタイルを没個性化させない十分なアクセントになっています。






えーと……





やっばい。書くことない。


なんせ乗ってる本人に聞いても
「良くも悪くも普通」
としか言わないくらいですからねぇ……。




Kawasaki W1-1965 1

元になったW1と言えばバイクメーカー メグロがカワサキに吸収され
メグロスタミナK2(497cc)の排気量拡大版としてカワサキからリリースされたバイクです。
当時の国産車の中では最大の排気量であり、かつホンダスズキヤマハとは違い
初めからアメリカ市場をターゲットに作られた志の大きなバイクでもあります。
アメリカ市場をターゲットにした割にはスタイルがハーレーベースではなく英国車ベース
シフト方式も右足チェンジ・左足ブレーキという英国車方式です。

実際アメリカでどういう評価だったのか。
英語版のウィキペディア読んでみると
「BSA(英国メーカー)のA10のサルマネだよね!
でもストロークが短いから
ちょっぴり高回転型で一応違ったキャラは持ってるよ!」

みたいな感じで書いてあります。
(実際その通りにしか見えんから困る)

高回転化した弊害か、振動が結構ひどかったようで、
しかもこの頃からオイル漏れを標準装備していたようです。流石カワサキ。
フェアレディZが登場するまでダサいと言われ続けた日本製4輪と同様に、
どうやらW1シリーズも単なるサルマネバイクとしてしか見られなかったようです。


ちなみに、後にサルマネされまくった日本車勢に品質で負け始めた英国メーカーは
悉く倒産していきます。ニホンザルのコピー怖えー




W650はというと、正直言ってW1のパチモンに似てる以外特徴はありません。

しかし細部を見てみれば昔と比較して間違いなく減っている高級感ある金属メッキ部品達、
それらに置き換わる無粋で安上がりなプラ部品共。

バーチカルツインなんて大層な名前がついてるけど単に垂直に立ってるだけ、
徹底してフラットなエンジン特性で旧車的ワイルドなトルク感はなく、
エンジンの脈動を手のひらに伝えてくれる振動もバランサーで消し去り、
しかしカワサキらしいガサツさしっかり残っているタチが悪いエンジン。

暖機運転でご近所の視線が痛いW1迫力の排気音はどこへやら、
まるで家庭内で発言権を失った父親の如く
規制によって情けなくスポイルされた排気音。


レトロにキックスターターを装備していますがセルモーターも同時に装着されており、
キックオンリーで辟易する度胸のない方々への間口を広げています。

スタイルって言うかシルエットだけは英国旧車な、ごくごく普通のバイクW650。



あえて特徴をあげるとするならば異常なまでのロングストロークエンジンということ。

エンジンの排気量はピストンの直径(ボア)と縦の移動距離(ストローク)で決まります。
同じ排気量でもボアを広げてストロークを短くしたり、
逆にボアを小さくしてストロークを長くすることが可能で、
ロングストロークエンジンというのは後者の思想で設計されたエンジンです。
ロングストロークは一般的にショートストロークと比較して
低速からパワーの出る穏やかなエンジンに仕上がります。

恐らくスーパーフラットなエンジン特性はこのことも関係するのでしょう。
単一シリンダーあたり350ccにも満たない排気量ながら、
どの400cc単気筒よりも長いピストンストロークを持ち、
ストロークでコイツに勝てるのはもはやファラオの怪鳥DR800Sとか
設計が50年ほど停滞しているシーラカンスのようなバイク
Royal EnfieldのBulletくらいでしょう。
1,2ランクほど排気量が上か、3,40年前のエンジン並みのロングストロークさです。


近年希に見るロングストロークエンジン!
って特徴地味ッ!!!
そもそもストローク気にするヤツとかほとんどいねーから!

このロングストロークエンジンも、回転をなめらかにするフライホイールが小さければ
旧車並みに強い鼓動感を伴う、味のあるバイクになったのでしょうが、
それすらも大質量フライホイールでスポイルしちゃったので
なんというかもう色々と勿体ないバイクであることは確かです。





ここまでいろいろと叩き書きましたが、
W650にはイマドキのバイクにはない、
若造には分からない「単車」の妙が詰まっているのだと思います。
私のようなガキには至らない部分に見えても、
そう言った部分さえ当たり前のように楽しめる大人のためのバイク、
それがW650なのだと思います。

性能にしがみつかず、
奇を衒わず、
当たり前の「バイク」に乗る。




こんなバイクが似合う大人になりたいものです。



























えぇ、私はきっと一生分からない系列のバイクです。

2011/05/10 17:00 | 無縁レベル 1COMMENT(6)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

No title

ボア径×ストローク
W650:72×83
DR800S:105×90
うん、自分がいかにおかしなエンジンのバイクに乗っているかがよくわかるなw

No:882 2011/05/12 01:56 | #- URL [ 編集 ]

No title

>C3
DR650でさえ82mmだから驚異的なロングストロークよ……
800はもうボアからストロークまで異次元過ぎる。
Bulletは350、500共にストローク90mmは完全に変態。

No:883 2011/05/12 17:00 | Chaos-T #- URL [ 編集 ]

面白い

分析、楽しく読みました。とても的確で参考になりました。ありがとうございます。

No:3617 2015/07/05 23:09 | てっちゃん #- URL [ 編集 ]

返信

>てっちゃんさん
コメントありがとうございます。
ブログ開始当初の記事故、だいぶ至らない部分が多いと思っておりましたが、
お褒め頂き光栄です。
W800が出てしまったので立ち位置が少し難しくなっちゃいましたね……

No:3632 2015/07/11 10:04 | Chaos-T #- URL [ 編集 ]

メグロの650

楽しく拝見
私は初期型 GT750乗ってました

カワサキのW1はメグロスタミナの拡大版ではなくすでにメグロからセニアT1 650 バチカルツインのエンジン キャプトンマフラーでありました
国産初のタンデムシート・・・らしい
それまでは自転車のサドルの様な単座席が主流

私の父が昭和31年頃に所有していましたよ
エンブレムが七宝焼きでした(笑

No:4453 2016/06/23 09:15 | masa #- URL [ 編集 ]

今さらですが

SRX-6のボア径×ストロークは 96 x 84 だそうです。
すこぶる快適ですよ?
フライホイールは気にしたことがないから知りませんが。

No:4738 2017/03/11 23:17 | kawayama #MmuM2xAQ URL [ 編集 ]

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

 | BLOG TOP |