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その9 GSX-R750

軽量化にかけられた独創技術と魂



GSX-R750



無縁レベル:2






80年代のバイク市場。

どのメーカーも、あらゆる排気量クラスで
「クラス最速」を目指して技術が惜しみなく注がれ、
ユーザーもまたそれを受け入れた時代。

単車というスポーツ性の強い娯楽物が、
もっとも正しい進化をしていた時代ではないかと思います。

社会的にはまったく正しくないのかも知れませんが。


60年代から70年代へかけてパワーを上げるために2気筒機は4気筒機へバトンを渡し、
80年代、増えていく発熱量の問題から空冷機は姿を消し、水冷機が台頭してきました。


しかし水冷化には重量増という、スポーツ車にとって致命的な欠点がありました。
熱を捨てるためのラジエーターコアは金属の塊、
クーラント(冷却水)も1L入っていれば1kgになりますし、
ウォーターポンプ、水路用パイプ、リザーブタンク等部品数増加は避けられません。


冷却と軽量化
水冷機を如何に軽く作るかがキモと思われていたところに、
SUZUKIは全く別のプロセスでアクションを起こします。
そしてそれがリリースされたのは、それまでフルカウルレプリカが存在していなかった大型クラスでした。






Suzuki GSXR 750 85
Suzuki GSXR750 85
GSX-R750('85)


中型クラスで加熱していたレーサーレプリカを大型クラスにまで持ち込んだバイク。

コイツは水冷とは異なる冷却方式を採用していました。

それは油冷

エンジンオイルの役割は4つほどあります。

誰もがオイルのイメージとして思い浮かべるであろう「潤滑」
爆発した燃焼ガスをオイルで燃焼室へ閉じこめておくための「密閉」
燃焼で発生した燃えカス等を洗い流す「洗浄」

そして発熱する金属部品から熱を奪い去る「冷却」

(オイルの役割を5つとして「防蝕」を加えることもあるようです。
私が学校で習ったのは確かこの4つ)


このオイルが元々持っている冷却作用を利用したのが油冷エンジンなのです。
油冷エンジンの特徴としてよく取り上げられるのがオイルクーラー(オイル用ラジエーター)、
シリンダーやシリンダヘッドに刻まれた目の細かいフィンです。
オイルクーラーでオイルの温度を下げつつ、
シリンダーはフィンからの放熱で済ませるわけです。


しかし空冷エンジンでもオイルの役割は変わらないわけですから、
空冷エンジンもオイルで冷やしている、と言えなくもありません。
また空冷バイクにオイルクーラーを取り付けて
オイルの温度を下げ冷却しようという手法も
油冷エンジン以前から使われていたものでした。

故に
「油冷なんて空冷と変わらん」
などと言われてしまうことがあります。


空冷と油冷では何が違うのか。

それはシリンダヘッドを重点的にオイルで冷却しているという点です。

シリンダヘッドはエンジンのほぼ最上部、
プラグやカムシャフト、バルブ、そして燃焼室がある部分です。
燃焼室があるため爆発直後の一番ホットな燃焼ガスを抱きかかえるのがシリンダヘッドで、
エンジン全体で最も発熱量の多い場所と言えます。
ここさえどうにかしてしまえば!
というわけで油冷エンジンではとにかくここにオイルを送り込んで冷却します。


どっこい、空冷エンジンも同様にシリンダヘッドにオイルを送ります。
あら、差別化できてなくね?という話ですが、
油冷エンジンはここからが別技術なのです。


まず空冷エンジンがシリンダヘッドにオイルを送る理由ですが、
これは「冷却」よりも「潤滑」の役割が強いのです。
シリンダヘッドにはバルブやカムシャフトと言った
ピストン同様に高速で駆動する部品が収まっています。
放っておけば摩耗して壊れるのは目に見えてるので、
エンジン下部のオイルパンからオイルポンプを使って
シリンダヘッド内各部にオイルをぶっかけて潤滑します。
このとき潤滑に合わせて多少なり冷却もできますがそれでは足りません

なぜならばオイルには「粘り」があるからです。

粘りがある、とはどういう事か。
粘りのある液体(気体でも可)の流れの中にボールでも沈めましょう。
液体はボールの外縁に沿って前から後ろへ流れていきます。
一見すると前から来た液体がボールの外縁をなぞって後ろへ行き、
ボール表面では常に新しい液体が前から後ろへ循環しているように思えます。

ところが実際はボールの表面には同じ液体がほぼ付着しっぱなし
粘りがある故にボール表面に液体がへばりつき循環してくれないのです。
ボール表面から少し離れたところでは液体が速度を持って前から後ろへ循環しているのに
ボールに触れている部分の液体は全く循環しない。
この表面の循環しづらい部分を「境界層」と呼びます。
これがどう冷却に悪影響を及ぼすのか。

液体をオイルに置き換えると、

発熱部品表面のオイルが循環しない

オイルが持ってる熱もあまり循環しない

このため部品表面とその外側とで温度の境界層ができてしまうのです。
これでは熱を効率よく捨てられません。


では油冷エンジンがどういう手法で温度の境界層に対処したのか。



ホースの口をつまんで水をぶち当てるのと同じ要領で、
オイルの放出口に絞りを付けて部品にオイルを噴き付ける
言ってみれば力業です。



オイルを上から垂らされた程度じゃ境界層は破壊できませんが、
こんな力業で噴き付けられたらどうしようもありません。

油冷エンジンは潤滑用のオイル流路・ポンプと別に
冷却用オイル流路・ポンプを持ちその出口に絞り(ジェット)を装備しているのです。

これこそが油冷が油冷たるゆえんなのです。


さて、冷却方式の説明が長ったらしくなりましたが、
この油冷がどの程度軽量化に寄与したのか。


それまでスズキの750フラグシップだったGSX750Eは乾燥重量215kg。
それに対してR750は乾燥重量179kg
実に30kg以上の軽量化です。

パワーも750Eの84馬力からなんと106馬力まで伸ばしています。(逆車のスペック)

このバイクこそが現代の過剰な「軽量ハイパワー」の産みの親とも言えます。


R750は後のモデルチェンジにより車重も増えてしまい、
'92年のモデルチェンジで油冷は限界に達したのか
エンジンは水冷へと置き換わりました。


そして今日、この名前を引き継ぐバイクは
現在のレースシーンに存在していない750という排気量を
唯一続けるスーパースポーツとして未だ生産され続けています。
GSXR600と同サイズの車体にそれよりハイパワーなエンジンを搭載。
「軽量ハイパワー」のコンセプトをだいぶ過激に守り通しています。

肝心の油冷エンジンはGSF750やイナズマ等を経てBandit1200やGSX1400へと引き継がれ、
油冷ファイナルエディションを最後として市場からは姿を消してしまいました。


しかし油冷エンジンは
他社と同じ方法は良しとしない、
技術者の意地と魂、技術が高い次元で注ぎ込まれた
素晴らしいエンジンなのです。


願わくば、再び油冷エンジンにまたがれる日が来ますよう。

2011/06/15 12:17 | 無縁レベル 2COMMENT(1)TRACKBACK(1)  TOP

コメント

こんにちわ&初めまして!
GSX-R750(GR71F)は、乗っていて実に面白く楽しいのですが、結構無理な設計も(各所ベアリングの容量や、重心位置、フォーク全長等)・・・
不満は多々ありますが、新車で購入して既に31年・・・
家内との付き合いよりも、長いんですよねぇ~♪
今は(手首の病気のため)登録を抹消しておりますが、再び走れるようリハビリ中です♪
あ、バイクは3台ありますが、公道走行可はカブ(C-70改107CC)だけでっす♪

No:4218 2016/03/21 17:34 | ライ・スケorHatsumiでっす♪ #ynuDY7Yc URL [ 編集 ]

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2014/01/06 | 空我's Moto Life |

無縁単車 墓地群 その9 GSX-R750

今回も、まいります!   m9っ ̄∇ ̄)無縁墓地シリーズ!! (↑勝手に短縮するなょ)   (・∀・)アハハ~ 違うんです!タグ付けしたんです。シリーズが増えたら、カテゴリーにアップするかも~ それより、ワタシの車歴、これで3代目なんですけど…orz   <引用開始> 軽量化にかけられた独創技術と魂 GSX-R750     無縁レベル:2 ...

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