その21 GSF1200
フロントアップ型ピーキーリッターオーバー
GSF1200
無縁レベル:3
さて、前回の話をちょっと纏めると
・エンジンには性能曲線図というものがあります
横軸回転数でトルクと馬力の変化を表すグラフ。
これ見るとエンジンがどのような性格をしているのかおおよそわかります。
・馬力の上がりかたについて
性能曲線で見たとき、
馬力の上がりかたが急だと加速感もアップします。
緩やかだと大人しい加速感になります。
・高回転型と低回転型
同じトルク値でも
高回転型エンジンは低回転型エンジンより最高馬力では有利ですが、
低回転域の馬力では負けてしまうことがあります。
じゃあスピードレンジの低い公道では低回転型は高回転型より速いんじゃ!?
残念ながら端的にそうはならず、
低回転型は車重・レスポンス等が高回転型より不利なことが多いため、
総合的に高回転型の方が速い場合が多いです。
では仮に車重が軽くレスポンスの良い
低回転型エンジンを積むバイクが居たら?

GSF1200('95)(写真は'99年式)
油冷4stDOHC4バルブ並列4気筒1156cc
97馬力/8500rpm 9.8kg・m/4000rpm
乾燥重量208kg
まぁSUZUKIのお約束というか、
見た目にはなんとも締まりません……
ハリもなく上下で曲がりきった丸出しのフレームパイプ。
まるで隅に追いやられたような位置に描かれたSUZUKIロゴ。
GSXR750のような投影面積の小さい薄っぺらなガソリンタンク。
そして1本サスペンション。
この頃のネイキッドの一般的なスタイルというと、
上部がタンクに隠れるフレームパイプ
でかでかとロゴの描かれたグラフィック入りガソリンタンク
2本サスペンション
となっております。
オールドルックに準ずるリッターネイキッドの中では異端とも言える構成。
しかしこの車体構成は実際は割と近代的で、
スーパーネイキッドやストリートファイターのようなコンセプトを感じます。
前回の話から何故コイツにつながるのかというと、
スペック表記で太字にした部分に注目してもらえれば分かるはずです。
ピークトルク9.8kg・mを4000rpmで発揮。
GSFの年代でもアメリカンなら3000rpm以下でピークトルクを発揮するのは珍しくありません。
なにが珍しいのか?
それはコイツのエンジンがVツインではなく並列4気筒であることです。
ザッとですが調べた限り、
GSF以前、
GSF以外に5000rpm以下でピークトルクを迎える
並列4気筒機は存在していません。
本来並列4気筒は高回転化のために生み出されたエンジン。
高回転まで回すためのエンジンを低回転に特化させる。
明らかに矛盾しています。
おそらくは各メーカー、
この矛盾を体現してみることにメリットを見いだせなかったのでしょう。
実際の所その効果はピーキーになって終わりだったので、
ある意味やらなくて正解ですよね。
しかしアメリカンは3000rpm以下でトルクピーク迎えるのにレスポンス悪いから遅い。
コイツも低速に堅めすぎてどうせレスポンス悪いんだろ?
ところがどっこい……
GSFの前身になるエンジンはリッターレプリカのGSXR1100(油冷)のもの。
10000rpm以上回るガチの高回転型エンジンです。
完全に回すためのエンジンです。
とはいえR1100の排気量アップ版であるGSFのエンジン。
ロングストローク化によって排気量を上げたならもっさり回らないエンジンになるところ。
しかし諸元を見てみるとどうもボアアップして排気量上げてます。
ストロークはレプリカのストロークそのままです。
レスポンスバッチリです。
むしろ過剰です。
車重の208kgもこの世代のネイキッドとしては異常に軽い。
同世代のリッタークラスネイキッドの車重はというと……
CB1000SF 乾燥重量235kg ホイールベース1535mm
XJR1200 乾燥重量222kg ホイールベース1500mm
Zepher1100 乾燥重量243kg ホイールベース1495mm
10kg以上軽いどころかゼファーと比較すると35kg軽い。
しかもこの208kgという数値は最終型のR1100よりも軽い。
カウルを纏ったレーサースタイルの先輩を軽さで超えてます。
なんだコイツ。
(ただしR1100はレプリカとは呼ばれるものの、
立ち位置的には今のハヤブサやZZR1400のような
メガスポーツ系(最高速狙いフルカウル)であると考えられます。
となると多少の車重は安定性に寄与するため
あえて重めの車重だったのかも知れません)
さらに特筆すべき特徴。
ホイールベースが短い。
ホイールベースとは前輪から後輪の軸間距離です。
車と同様に、これが長いと直進安定性が強くなり、
これが短いと旋回性がアップします。
GSFのホイールベースは1435mm。
400インパルスのホイールベースは1435mm。
400と一緒。
ちなみに上に挙げたリッターネイキッド共は
CB1000SF ホイールベース1535mm (+100mm)
XJR1200 ホイールベース1500mm (+65mm)
Zepher1100 ホイールベース1495mm (+60mm)
異常に短いホイールベース。
この1435mmというのがどういう数値なのか、
400と同じなのも驚異的ですが、
なにより同じく'95年のGSXR750と同じホイールベースです。
レプリカと同じホイールベースのネイキッド……
本当にコイツはネイキッドなのか?
さて、さんざん構成について突っ込みましたが、
その結果どういうバイクが出来上がったのか?
簡単にウイリーしてしまうじゃじゃ馬。
強烈な低速トルクと吹け上がるエンジン。
軽い車重。短いホイールベース。
グリップたっぷりの太い扁平タイヤ。
ウイリーを抑制できる要素欠片も無し。
ウイリー練習用マシンとして
SSやオフロード車と並んで名前が挙げられていたり。
レビューでは油断するとウイリーとか書かれたり。
GoogleでGSF1200と入力すると
予測ワードに「GSF1200 ウイリー」とか表示されたり。
なんかもうウイリーの申し子です。
2輪なんだし前輪使えよ。
国内では不人気車扱いだったのですが、
海外ではリッターはこうでなくちゃ!と言わんばかりの人気だったそうです。
外国人はかっこ悪いバイクは自分でカスタムしちゃいますし。
後継のイナズマ1200 GS1200SSになると
凶悪な低速トルクがなりを潜めてしまい、
特にイナズマは完全な没個性バイクとなってしまったようです。
現在では一応の後継にあたるBandit1250がトルクピーク3500rpmとなっていますが、
こちらは新開発の水冷エンジンでありロングストローク化されたものなので
数値ほどピーキーではなくむしろ乗りやすいバイクとなっております。
メーカー純正ウイリーマシン。
排ガス規制も騒音規制も厳しい現在だからこそ、
低速に特化させすぎたGSFの真の後継たるバイクが望ましいものです。
2011/10/29 14:13 | 無縁レベル 3 | COMMENT(12) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
乗ってたよ! 初リッターオーバーだよ!
…マジでウィリーするんですよ、こいつ。
スロットルワーク…パーシャルスロットル練習に最適だったw
No:1205 2013/04/21 08:22 | #- URL [ 編集 ]
昔テストしていました。ただ、輸出用は、早いバイクですが、国内使用は、クラッチが異なり、それ以外の短所も含んでいた、コストダウンの悲しいバイクでした。
No:1249 2013/05/19 19:45 | ライダー1 #- URL [ 編集 ]
おもろいバイクだったな〜
でもバ◯ク王で売ったら一万にしかならんかった。
二年後、48万円で売ってるのを発見してしまった。
楽しい思い出がバイ◯王のせいで台無しになったよ。
ほんと最悪。
No:2427 2014/06/20 09:13 | マア坊 #pYrWfDco URL [ 編集 ]
短期間ではありますが
乗っていました。
巷間凶暴というイメージがありますが、
至って普通、スズキらしい作りのアバウトさが印象としてありますね。
あまり凶暴なイメージを求めて買うと、
拍子抜けすると思います。
背高な感じのポジションなので、
ゆったり乗れるのはいいのですが、
シートが形状、材質ともよくないため、
尾てい骨がいたくなります。
そこだけは変えたほうがいいですね。
No:2987 2014/12/21 09:12 | グース #- URL [ 編集 ]
返信
>グースさん
ツアラー的な運用されてるオーナーさん多い辺りわりかし普通に扱えるんだろうなーと見ております。
ってあれシート駄目なんだ……ツアラー適正足らんですなw
No:2992 2014/12/23 21:02 | Chaos-T #- URL [ 編集 ]
いまだにオーナーです
GSXR直系のエンジンはボアアップとハイカム&TMR40のおかげで170psの化け物ができました。
いじればいじるほど変態度の上がるバイクです。
こいつだけは一生のり続けたい相棒です。
No:4334 2016/05/08 10:06 | クルルルルル #- URL [ 編集 ]
10年目
エンジンノーマルで吸気系BMCエアクリーナー、排気系アルミサイレンサーに交換。リミッターカットとPPS装着。最高速260kmでます。シートはワンオフでお尻は疲れ知らず。乗りやすく10年近く乗り続けてます!
No:4467 2016/07/09 12:37 | GSF1200Sred99' #- URL [ 編集 ]
まだまだ現役!
楽しく拝見させていただいてます。
これ乗ってます。乗り出してから、もうすぐ20年!です。
震災の直後、これで嫁を探しに行ったこともありました。
※ちゃんと連れて帰りましたよ
これいつまでたっても飽きないんですよね。
もらい事故とかありましたが、まだまだ乗り続けたいです。
No:4671 2016/12/29 07:29 | spa #- URL [ 編集 ]
懐かしいですね。「ミスターバイク」でシンヤさんのレビューを見て、速攻で初期型を買いました。あれからもう20年近くにもなるのか…。印象に残ってるのは「ヒュルルルル…」という白バイみたいなエンジン音ですね。住宅街を低速で走っていると、よく犬に吠えられたもんです(冗談でなくマジで)。たぶんあの周波数が、犬の鳴き声に近かったりしたのかもしれません。いずれにしても小さくて軽いくせに滅茶苦茶パワーがあったので、街乗りするにはものすごく楽でした。
No:4680 2017/01/05 14:51 | #T6o1GNSM URL [ 編集 ]
国内ネイキッドでは間違いなく最も凶暴系だった。
6000rpmの加速はまさに後ろから蹴飛ばされる感じで一瞬意識が朦朧とするブラックアウトを味わえるほど。
しかし最も印象的なのは前時代的ハンドリングのクセ。
歩くような微速域では強烈に倒れ込もうとする。
最新のCB1300辺りの方がすべての面で完成度は高い。
特に作り込みのチープさはコストを考えてもガッカリするほど。
No:4730 2017/02/25 15:33 | 名無さん #CLcRwetc URL [ 編集 ]
え、かっこよくない…?!
えー、個人的にはよく纏まったいいデザインだと思うのですが…。
センターカムチェーン&細かいフィンの刻まれた美しいエンジン、そのエンジンの魅力を引き立てるフレームワークの曲線美、小ぶりながらも陶磁器のように細やかな造型のガソリンタンク&テールカウル.....
特にフレームに関しては、こいつみたいにエンジンを魅せるダブルクレードルというのは昨今見かけなくなった気がします。バイクの魅力はエンジンにあると考えている私にとっては、こいつはエンジンの造形も曲がり方も含めて大好物です。このごろエンジンを隠してしまうような極太ツインスパーフレームやクソデカ樹脂カバーだらけのバイクばかりで食傷気味なので、ぜひとも今出してほしいところです。
(鈴菌って言った人、先生怒らないからちょっと来なさい)
No:4856 2017/08/07 20:31 | するめ(1jk) #- URL [ 編集 ]
よくジムカーナ会場で見ました。
「このヒート、タイム出そうにないな。 だったら目立っちゃお」と後半ウィリーする人もいました。
一度も乗ったことはないですが、GSF750は欲しくてカタログ取り寄せてもらいました。
教習車の(笑)
750は私にも乗れるレベルのパワーでしたね。
No:5086 2018/11/22 23:27 | KK #- URL [ 編集 ]
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