その152 Sei

情熱の6連装



Sei



無縁レベル:3





並列6気筒

それはバイクの一つの極地





多気筒化すれば高回転化、ひいては高出力化は可能ですが、
エンジン重量が重くなりますし何よりエンジンのサイズそのものもでかくなりすぎます。
そもそもの車格が小さい、バイクという乗り物でそれは致命的です。
ましてスポーツマシンともなれば運動性の悪化はなおさら避けるべきなのです。

現状スポーツ色の強い路線に6気筒機は残っていない状況となっています。



さて。
並列6気筒と聞いてライダーが思い浮かべるバイクは
恐らく日本じゃ決まっています。




CBX-oarf-xl.jpg
HONDA CBX


1966年
レースシーンで2st勢に4stで張り合うために高回転化を求めたHONDAの回答は並列6気筒。
そうして生まれた空冷6気筒の250ccレースマシンRC166を
今度は市販車でやってみようと考えたアホ集団本田技研
'78年に送り出したのがCBX1000です。




Kawasaki Z1300 3
KAWASAKIも同じ頃フラグシップとして
並列6気筒機を送り出しています。





さすが世界を牽引する日本メーカー。
世界に先駆けて並列6気筒機を----







いや、先駆けではないのです。




実はCBXよりもZよりも先に、
市場に送り出された並列6気筒機が存在したのです。












Benelli 750 sei 73 4
750Sei('73)


情熱の国イタリア発の並列6気筒機
日本メーカーよりも5年ほど早く、
それは作られていたのです。




空冷OHC2バルブ並列6気筒748cc
最大出力 76馬力/9000rpm
乾燥重量 235kg
最高速度 200km/h




Seiの事を書く前にそれを作ったメーカー、ベネリについて少し書いておきましょうか。


Benelli~ベネリは歴史の古いイタリアのメーカーです。

遡ること1911年。場所はイタリア中部、東の湾岸都市ペーザロ。

後家さんとなったテレサ婦人
6人の息子の将来のために財産つぎ込んで会社を立ち上げます。
その会社は自動車やバイクの修理専門の工場でした。

当初は修理専門でしたが部品を作るようになり1920年に自社製エンジンを発売。
翌年にオリジナルのバイクを製造し始めました。

技術力は確かだったようで、
6人息子の一人が自らベネリマシンでレースにでてチャンピオンになっています。

第二次世界大戦後、
ベネリ製の100cc前後や350・500などの小排気量モデルはとても軽量で、
戦後のイタリアでは高い評価を得ていました。

しかしそこから先が問題。
ベネリは小排気量モデルで米国市場を狙っていたんですが、
当時すでに米国の小排気量は竹槍の日本兵が暴れ回っている状態でした。

イタリアのメーカーは英国メーカーより先に竹槍で突かれていたのです。
同盟国だったのに。


ベネリはここから根性を見せて'69年に650ccのマシンをリリース。
手堅い評価を受けたようですが
同時期日本メーカーもやらかしていたのでベネリ大躍進とはいかず、
徐々に苦しい状態に追い込まれたベネリはデ・トマソの傘下に入ります。

これが'71年のことでした。




さぁ。
デ・トマソというとパンテーラが有名ですが、
この会社は基本的にエンジンなどの自社開発はやってないことで有名です。

トマソ氏はベネリを買収して「パンテーラみたいな2輪を作りてぇ」と言いました。
で、彼がイメージしたのはよりによってRC166だったようです。
しかしデ・トマソは独自開発なんてやっていません。


そこでRCの事ならHONDAに倣え!と、
当時高性能を誇っていたCB500を参考にエンジンを作り始めます。






benelli 750sei 74 01


そうして生まれたのがこの750Seiだったワケですが、
参考にしすぎてボア×ストロークまで全く一緒だったため、
CB500のエンジンを自社工場で1個半くっつけたなどと言われます。



かくして、
奇しくもHONDAより先に市販車初の並列6気筒バイクが誕生したワケです。




ところがどっこい全然パンテーラじゃなかった。


確かに6気筒のエキゾーストは官能的。

でも重い。でかい。



通常エンジン横に来るオルタネーターをエンジン後方に置いたり、
キャブは2バレルで6個ではなく3個で済ませたり、
あれこれ小細工は弄してみたもののやはり6気筒。
幅がありすぎるのです。



今で言うスーパースポーツと言い張るにはツライマシンでした。


一応の評価としては、マルゾッキのサスペンションがいい仕事をするわ、
トップギア2000rpmからでも加速していく余裕のトルクなどに定評があり、
徐々に750Seiはツアラーとして認識されていきます。


パンテーラ(豹)というよりラクダですな。


そして1979年



Benelli 900 sei

ツアラーライクにビキニカウルを装備して
排気量を拡大した900Seiが登場。



排気量が上がってもキャブの径はそのまんまってのが
微妙に投げやり感が漂っているように思えるのは気のせいでしょうか。






こんな変遷を辿った世界初の6気筒機。
当初のスポーティー路線からは多少外れたものの、
その性能は確かに折り紙付き!!

これはブレイク間違いなし!!!!







しなかったねぇ。



色々と敗因は語られていますがざっくりとまとめてみると----



Seiのプロトタイプは'72年にヴェールを脱ぎ、
本腰の供給体制が整ったのは'74年からなんて言われています。

'72年というとアレです。






Kawasaki Z900 76
Z1登場の時期です。



さらに'73年。




Laverda 1000 3C 73 4
イタリアLaverdaも981ccトリプルを投入。


最新スポーツ戦線はナナハンどころじゃなくなっています。




そこにロマンはあるがでかい重いとりわけハイパワーでもないバイクをポンと出されても困るワケで、
その上この時期のイタリア車の電装部品は
致命的なレベルで信頼性が低かったなどとされています。

さらにSeiはクランクとギアボックスが貧弱だったと言われており、
もはやSeiに残された武器は6気筒以外無い状態に。



さすがに6気筒だけじゃ生き残れはしませんでした。


一応900まで排気量アップしましたから細々と台数がでていたのかも知れませんが……







世界最初の量産6気筒機ながら
あまりにその存在が儚かったSei。



6気筒を作ろうとしたその情熱だけは見事なバイクです。











2015/11/23 13:07 | 無縁レベル 3COMMENT(20)TRACKBACK(0)  TOP

コメント

竹槍の時点で忠勝さまがやあやあ我こそは!と名乗りをあげるのを想像してしまいます。
しかしあれですね、黎明期はなんにしてもロマンが一杯。試行錯誤の数だけロマンと失敗がある。

No:3968 2015/11/23 13:25 | dan #- URL [ 編集 ]

初めてコメントさせていただきます。
同盟国イタリアにも竹槍の日本兵に蹂躙された珍車があったとは…。
バイクとは全く関係ないですが、当方はガンマニアでもあるのでベネリと言われると某ショットガンが頭に浮かびますw

No:3970 2015/11/23 13:35 | 西風カイ #- URL [ 編集 ]

面白い! こんなバイクもあったのか!
いつも面白い記事をありがとうございます。

No:3971 2015/11/23 18:49 | #- URL [ 編集 ]

初コメさせていただきます。
seiの名前を知ったのはR-16という漫画でした。
主人公の先輩がCBXを乗ってて
seiはシングルカムでダメ、空冷並列DOHC6気筒はCBXだけなんだよ!と力説してたはず…
しかし転けたら一発でエンジン割りそうな幅ですね

No:3972 2015/11/23 19:24 | mamorun #- URL [ 編集 ]

まさしく、ショットガンのやうな衝撃を与えたと思ったら、実際は自分に向けて撃っていたという訳ですな...

EICMAなら、Rnineスクランブラーかと。油冷のスクランブラー...やられたなという、気持ちで一杯です

No:3973 2015/11/23 20:13 | astray-γ #- URL [ 編集 ]

ベネリ...

私の中では「トルネード」しか出てきませんでしたwww
 (ショットガンもありましたが...)

あのテール下のラジエターファン!!!
思わずも「ブイ・スリャーーーー!!!!!!!」と叫びたくなります。

No:3974 2015/11/23 22:04 | SⅢ保菌者 #- URL [ 編集 ]

18歳のころベネリのクワトロが並行輸入されていたので買おうかと本気で考えていたことがある。ま、やめてZ250FTを
買いましたけどね。

No:3975 2015/11/24 05:25 | 中村商店 #SFo5/nok URL編集 ]

「同盟国だったのに」で噴き出しました。
あと、「ラクダ」で追撃ちを。
内容はもちろん、サービス精神も益々充実!。
これからも楽しみにしてます。

No:3976 2015/11/24 11:51 | いのとん #- URL [ 編集 ]

音は良いのに・・・

900Sei好きなんですけどね・・・
直6バイクの一番魅力は音ですね・・・フェラーリにも勝ると思います。
しかし、
バイクの場合、音や操縦性が悪くても絶対性能が優先されるってのはどの国でも同じですね。

No:3977 2015/11/24 15:22 | R-いちろう #j//uF7bU URL編集 ]

何でだろ?この車種は知ってました(笑)
ただ、発売が日本よりも5年も早かったとは知らなんだ
特徴的な6本出しサイレンサーが割りと好きだったりしますが、重いでしょうねぇ…

それに漢の6気筒を実車で見たことがありますが、
幅が半端なくてとてもスポーツ出来そうにない巨体に圧倒された記憶があります。

それを考えれば、ベネリは竹槍の応酬に対抗出来ず、
最期は自社製品の暴発を喰らったわけですな(笑)
なんというか、実に黎明期らしいバイクです(^o^)




No:3978 2015/11/24 18:01 | NZTRSS #- URL [ 編集 ]

いつの時代にもタイミングを間違えるのは人に限らずバイクでもある事実。

今時の伊太公バイクも電装怪しいですよ。

No:3980 2015/11/24 22:03 | ぷー太 #- URL [ 編集 ]

記憶に古いです・・・懐かしい・・・
20年ほど前に某伊豆の解体屋で寝てたこいつ、なんだこいつ?変なエンジンしやがって!と興味をもたれたのが運の尽き。
翌年にはあってるかどうかもわからない自作パーツ万歳のぱっと見キレイな体になってメリケンに運ばれていきました。
いったい発売当事の某伊豆でどこの誰がこいつを買ったのか・・・よく苦情こなかったなあ・・・

No:3981 2015/11/25 01:33 | カフェホーネット #- URL [ 編集 ]

当事ですら電装系なんてさっぱり入れ替えましたが、今でもやっぱりイタリアはイタリアなんだろうなあってのは思いますよ。
というか欧州は今も昔もやっぱり欧州なんでしょうし

No:3982 2015/11/25 01:37 | カフェホーネット #- URL [ 編集 ]

6気筒の元祖がイタ車というのは初めて知りました。
てっきりCBXが最初の量産品かと思ってました。
イタリア人恐るべし!

で、ストラスフィアはいつ量産されるのでしょうかね?w

No:3983 2015/11/25 14:59 | まほぞお #UKpHjwNM URL [ 編集 ]

六気筒って、合わんのですかね?

ふーん、こんなのがあったんですね。そういや四気筒も先駆けはMVアグスタでしたっけ?(市販でないけど)イタリアの発想力、恐るべしかもです。えっ、バトルオブブリテンに複葉機で参戦?・・・あっ、ほら自国のベストを尽くしたとも言えるわけですし・・・そう言えば、日本人がドイツに行って、日本人とわかると、必ず言われるジョークがあるそうですね。・・・今度はイタ公抜きでやろうぜ!(・・・何を?)
スズキのコンセプトモデル、現代版カタナことストラトスフィアもエンジン作ったものの市販されませんねぇ。スポーツでは無い、所有欲を満たす為の六気筒ってのは、それはそれで正解という気もするんですけどねぇ。(そこそこの加速と実測200出れば公道で困る事はありませんしねぇ。)先日、初めて参加したツーリングチームの中にBMWの六気筒の人がいましたが・・・クジラみたいな車体でしたが・・・攻めてたなぁ。追い付けませんでした。
日本のオートバイは、どこに向かうんでしょうかね?安さでは新興国に勝てないでしょう。ブランドでは欧米に敵いません。性能?うーん、使えない200馬力が王道とも思えないんだよなぁ。新型SV650を見て、心底ガッカリして悲観的になってます。

No:3984 2015/11/25 15:37 | トモ #- URL [ 編集 ]

ベネリかー、懐かしいです( ;´Д`)
昔からバイク雑誌が年に一度出してる総合カタログに出てましたから、中学の頃から存在は知ってましたが、実物は見た事無いですね。

ただ、知り合いのバイク屋のオヤジが何故か900をCBX、KZ1300と一緒に持ってたらしく、少し話を聞いたら・・・足周りが特徴的な馬力が穏やかなCBXぽい、と・・・

高速なんかで走り続けると気持ち良いいらしいです。
ただアクセル開けて回転が上がって音だけは加速しても、CBXやKZに比べて実速がヌルいと。

後、CBXと同じで真ん中2気筒が夏場は火鉢状態だから大変らしいです( ;´Д`)

No:3987 2015/11/27 21:50 | ノブシン #TIXpuh1. URL [ 編集 ]

返信

>danさん
ロマンです。もはやロマンしかありません。
しかもイタリア車はいちいちセクシーだから困りますわ……

>西風カイさん
コメントありがとうございます。
ベネリというと今はもう銃器連想される方のほうが多いんですかね……
同盟国だろうが日本は容赦しません。

>>面白い! こんなバイクもあったのか!
ありがとうございます。
日本だけでなく世界中こんなバイクだらけですすばらしき世界。

>mamorunさん
コメントありがとうございます。
「OHCだけどあれCB500ベースだぜ」なんて言ったらどういう顔をするのかみてみたいものですなぁフフフ。
6発機は転けて滑走したらおっしゃるようにアウトでしょうね……

>Astray-γさん
えぇいショットガン知ってる人が多すぎるッ
自害じゃないですが跳弾で大変なことに……
R-nineTはすごい発展を見せていますね。
しかもいちいちかっこいいんですよあれ……畜生……!!

> SⅢ保菌者さん
私もトルネードから入った口です。
トルネードもそれこそ記事中でこそっと書いてる「評価を受けた大型」こそが原点です。
しかし今のベネリのデザインは攻めててすさまじいですなぁ。

>中村商店さん
'80年代半ば当たりまではカタログみると割と当たり前に並んでいたようですね。
いやーベネリのバイクの購入を悩める時代……すばらしい。
バイクのできはさておき。

>いのとんさん
竹槍の日本兵は見境がないのです!
いやー古い洋珍シリーズはたいがい日本が原因で死んでますからね……

>R-いちろうさん
やはり6発はなんか別格ですよ……
この頃は今のGLみたく低速特化でもありませんし。

>NZTRSSさん
実は市販車の初発はコイツだったという……
ロマン詰め込んでも技術が追いついてない辺りが泣けるというか熱いというか……
黎明期、グレートです。

>ぷー太さん
イタ公だけでなくブリ公も電装怪しいようで……

>カフェホーネットさん
アメリカに出て行くとは……近頃この手合いはアメリカで発掘されて日本に持ってこられるというのに……
こぎれいになって出て行った彼もいずれ戻ってくる……?

No:3992 2015/11/30 12:55 | Chaos-T #- URL [ 編集 ]

返信

>まほぞおさん
案外知られてませんっていうか知名度が……
ストさんいいんですけどねー……作らんでしょうなぁ……

>トモさん
よくご存じで>アグスタ
4気筒機を量産できたからHONDAは恐ろしいのですよね……
少なくとも高性能高信頼という意味合いでは日本車はうまいことブランド確立しているのではないでしょうか。
多少みっともなくとも、もうそこ以外に道は残っていないかと思います。

>ノブシンさん
や、やはり真ん中シリンダーが厳しいんですな……
穏やかなCBX……余計にツアラーでパンテーラじゃないですねww
うーむ実車を見てみたい。

No:3993 2015/11/30 21:05 | Chaos-T #- URL [ 編集 ]

いや、ほらさイタ車ってだいたい大袈裟すぎるぐらいのキャブ付けてるからこれでトントンだったんだよきっと!
まあ、でも三個しか付いてないのには反論できんな

No:3995 2015/12/01 12:59 | 火事場 #- URL [ 編集 ]

風の噂では出戻りして千葉にいるなんて話も聞きましたが真実はどこにあることやら(置いてあった解体屋も輸出ディーラーに現存しないので
戦後から高度成長期にかけての個人輸出入しかなかった時代からの流れは本当にわけがわかりませぬ

No:3997 2015/12/03 00:46 | カフェホーネット #- URL [ 編集 ]

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